課題曲:「Be The One」募集パート:ボーカル
「Be the One」のボーカルには、Dua Lipa ならではの“落ち着いた存在感”があります。声を張り上げることなく、淡々としたトーンを保ちながらも、曲全体を通して説得力のある情感が流れています。
特に印象的なのは、Aメロ(ヴァース)での“語りかけるような距離感”。リズムに対してわずかにゆとりを持たせ、急がず、押し出さず、空間を含んだまま声を届けることで、曲全体に柔らかく揺れるようなグルーヴが生まれています。
それに対し、サビではややテンポ感が前に寄り、音の運びにも少し張りが出てきます。この緩急の差が、曲の構成に自然な抑揚を与えているように感じられます。
Dua Lipa のリズムの取り方は、常に一定ではなく、行の終わりや母音の処理にごくわずかな「遊び」を入れているようにも聴こえます。全体としては、ビートを正確になぞるというよりも、フレーズ単位でタイミングのニュアンスを調整している印象があります。
声の出し方については、息を多めに含んだソフトなトーンを基調にしながらも、芯の位置はしっかりと保たれており、ミドルレンジを軸とした安定した響きが感じられます。
また、語尾を息でやわらかく抜く箇所も多く、言葉を置いていくというより、流すように紡いでいる点も特徴です。
全体として、この曲のボーカルには「抑制の中にある力」が通底しています。決して感情を表に出しすぎることなく、余白を残したまま、聴き手の想像力を引き出すような歌い方。それこそが、この楽曲の魅力を支えている表現の中核です。
【楽曲解説】
2015年10月30日にリリースされた「Be the One」は、Dua Lipa のセルフタイトルのデビューアルバム『Dua Lipa』(2017年)に収録されたセカンドシングルです。当時、彼女はまだ19歳。若くして放たれたこの1曲が、世界中のリスナーの耳と心を一気に惹きつけました。
ドイツのラジオ局で取り上げられたことをきっかけに注目を集め、ヨーロッパやオーストラリアを中心に商業的な成功を収めました。チャート順位は以下の通りです:
- ベルギー(フランデレン地域)1位
- ポーランド 1位
- スロベニア 2位
- オーストリア 7位
- ドイツ/オランダ 11位
- イギリス 9位
- オーストラリア 6位
- ニュージーランド 20位
さらに、イギリス・オーストラリア・イタリアではダブル・プラチナ、ドイツではプラチナ、ニュージーランドではトリプル・プラチナ認定を受けています。
この曲は、Dua Lipa のキャリアにおける初の大ヒットとなり、国際的な人気を確立する契機となった作品です。
【アーティスト紹介:Dua Lipa】
Dua Lipa はイギリス出身のシンガーソングライターで、14歳の頃から YouTube に自身の歌唱動画を投稿し始めました。
Alicia Keys の「No One」、The Beatles の「Golden Slumbers」、Etta James の「I’d Rather Go Blind」など、ジャンルを超えた名曲のカバーを通じて、その歌唱力と表現の深さで注目を集めました。
特に、スタンダードナンバーを“子どもらしく”ではなく、きちんと意味をもって歌いこなしていた点に、早くから非凡なセンスが見て取れます。だからこそ、Dua Lipa の歌は、世代や性別を越えて、多くの人の心にまっすぐ届いているのでしょう。
Dua Lipa の音楽は、ポップス、R&B、エレクトロニックを融合した独自のスタイルを持ち、その個性と安定した技術で世界的な評価を獲得。若くして“本物”と認められたアーティストとして、今なお世代を超えて広く支持を集めています。
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